経年劣化やライフスタイルの変化などで住まいの改修が必要になったとき、考えるのが「リフォームと建て替えどっちがいいのか」でしょう。どちらも快適性が高まる改修方法ですが、実際のところ適しているのかどちらか悩むものです。
今回は、リフォームと建て替えの違いについて徹底解説します。おすすめのケースやそれぞれのメリット・デメリットを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
リフォームと建て替えはどっちがよい?
では、リフォームと建て替えどちらがよいのでしょうか。ここでは、それぞれのおすすめのケースを紹介していきます。
リフォームがおすすめのケース
リフォームとは、基礎部分を残して大部分を作り直す改修方法です。戸建ての場合は骨組みを残してフルリフォームできますが、マンションの場合は設備や床など目に見える部分のみリフォームすることが多く見られます。
リフォームがおすすめのケースは、費用を抑えたい場合や住みながら工事を済ませたい場合です。それぞれのケースを詳しく見てみましょう。
費用を抑えたい場合
一般的に、建て替えよりもリフォームのほうが費用はかかりません。新しく取り入れる設備や内装のグレードによっては相場よりも高くなることもありますが、ほとんどのケースでは費用を抑えられる傾向にあります。部分的にリフォームする際にかかる費用を一例まとめたので、参考にしてください。
リフォーム内容 | 費用相場 |
キッチンの交換 | 60~150万円 |
トイレの交換 | 15~50万円 |
壁紙の張り替え | 5~10万円 |
床の張り替え | 10万円ほど |
ただし、リフォームの内容や規模によって費用が大きく変動する点には注意しましょう。例えば築20年の住宅であれば水回りや内装、外壁などのリフォームがメインになるので、100〜500万円に収まるでしょう。
しかし築30年になれば見えない部分の不具合が進んで、スケルトンリフォームをするかもしれません。スケルトンリフォームをするとなれば、費用は800〜1,200万円かかるでしょう。それでも建て替えよりは費用を抑えられます。
居住したまま工事を済ませたい場合
リフォームは部分的に進められるので、工期が短くて済みます。そのため、リフォームの内容によっては住みながらの工事が可能です。工事は日中行われるので、夕方以降は普段通り過ごせます。キッチンやお風呂などの入れ替えのみであれば1週間ほどで完結します。少し生活に支障が出ますが、ホテルやマンスリーマンションに宿泊するよりもストレスなく過ごせるでしょう。
ただし、断熱リフォームやスケルトンリフォームを行うとなれば2〜3ヵ月かかることもあります。比較的短い工期で済みますが、あらかじめ詳細を確認しておくと安心です。あまりにも工期が長引くようであれば分けて工事をすることもできるので、業者に相談して決めましょう。
建て替えがおすすめのケース
大掛かりな工事にはなりますが、老朽化を根本から直したり建物の寿命がのびたりと、さまざまメリットが得られる改修工事です。建て替えは、基礎部分から取り壊して1から建築し直す方法のことを指します。建て替えがおすすめはケースは以下のとおりです。
- ・耐震性能を高めたい場合
- ・住宅ローンを活用したい場合
- ・ライフスタイルが変わる場合
それぞれのケースを解説します。
耐震性能を高めたい場合
建て替えは基礎部分から新しくできるため、耐震補強がしやすい特徴があります。時間の経過とともに住宅の基礎は劣化していくので、いずれ地震の影響で倒壊する危険性も少なくありません。
建て替えを行えば耐震性を高められるのはもちろん、耐震等級3も目指せます。耐震等級の数字が大きくなるほど地震に強い家です。耐震等級3であれば、震度7の地震が2回起きても倒壊する心配がありません。これからも長く住み続ける場合や、子どもや孫の世帯に譲り渡すなら、耐震性能は高めておいたほうが安心です。
住宅ローンを活用したい場合
建て替えを行うと、新築と同じ住宅ローンを利用できます。リフォームでもローンを組むことはできますが、金利が高いのがデメリットです。住宅ローンなら低金利で利用できるので、月々の出費を抑えられます。
なお既存の住宅ローン返済を終えていない場合は、建て替えローンを一本化することも可能です。その際、支払い方法を変えることもできるので、ライフスタイルに合わせてペアローンやリレーローンを検討してみてもよいでしょう。
1人で支払うよりも負担が減るので、効率よく返済できるかもしれません。注意点としては、融資額が大きくなると返済期間が長くなることです。月々の支出は抑えられるかもしれませんが、長期間返済しないといけないため、融資額と返済額はしっかり計画しましょう。
ライフスタイルが変わる場合
介護が必要になったり2世帯で住むことになったりと、ライフスタイルが変わるケースも建て替えを検討したいところです。リフォームで補えないわけではありませんが、今後長く住んでいく予定なら、基礎から改修したほうが安心して暮らせます。
建て替えを選ぶと家族構成や健康に配慮して、間取りや内装を1から変えられます。家族の意見を取り入れながら建て替えを進めれば、暮らしやすい家を実現できるでしょう。また将来のことを考えて、バリアフリー化を意識するのもおすすめです。
今は不自由なく暮らせていても、足腰が弱くなったり子どもが生まれたりして、バリアフリーのほうがよいとなるかもしれません。廊下や階段の幅も広めに確保して、移動しやすいように工夫しましょう。
リフォームと建て替えの違い
リフォームと建て替えの具体的な違いは何でしょうか。ここでは4つの項目で違いを解説します。
- ・工事にかかる費用
- ・工事の期間
- ・工事後の建物の寿命
- ・工事可能かどうかの制限
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
違い①工事にかかる費用
工事にかかる費用は、建て替えのほうが高くなる傾向にあります。リフォームの内容にもよりますが、撤去や廃材処分にそこまでお金がかかりません。既存の設備を活かしながら住まいを改修するので、部分的なリフォームができます。
建て替えは住まいを一新できる一方で、費用は高額です。基礎部分まで取り壊して建築し直すので、撤去費用や廃材処分費が大きくなるのはもちろん、新しい資材の購入にも費用がかかります。建て替えは新築と同じ手続きを踏むことになるので、建築費用にプラスして不動産登記や印紙税などの諸経費が発生します。
固定資産税も見直されるので、出費は多くなるでしょう。ただし家の劣化具合によっては、フルリフォームするよりも建て替えのほうが費用を抑えられる場合もあります。
違い②工事の期間
工事期間の違いについては、リフォームのほうが短期間で済みます。リフォームの内容や規模によって期間は変動しますが、キッチンやお風呂などの取り替えのみであれば、1週間ほどで完了することがほとんどです。いくつかのリフォームをまとめて行ったとしても、半年以内で終えるでしょう。
一方の建て替えは、半年以上かかることが多く見られます。建て替え中は家の中で過ごせないので、仮住まいの用意も必要です。仮住まいでどれくらい滞在するか決めるためにも、あらかじめ建て替えにかかる期間を確認しておきましょう。
違い③工事後の建物の寿命
リフォームと建て替えでは、工事後の建物の寿命に大きな違いがあります。基本的には、リフォームよりも建て替えたほうが寿命はのびるとされています。相場としてはリフォーム後の寿命は30〜40年、建て替え後は60〜70年です。
もちろんメンテナンス頻度によって寿命は変わってきますが、定期的にきちんと行えば長持ちします。将来売却も視野に入れるなら、全体的な改修工事を行ったほうがよいでしょう。
違い④工事可能かどうかの制限
実は、どのような状況でもリフォームや建て替えができるとは限りません。それぞれに工事の制限があるので、100%自由にできるわけではないので注意しましょう。
例えばリフォームの制限は以下のような内容です。
- 建物の構造によって希望する間取りに変更できない
- 老朽化が進んでいてリフォーム自体不可
木造の「ツーバイフォー(2×4)工法」という工法でつくられた建物は、柱ではなく壁で家全体を支えています。そのため、壁を1箇所でも撤去すると支えられなくなるので、現状から間取りを変更することができません。
ツーバイフォー工法はパッと見ではわからないため、事前に設計図や業者に問い合わせて確認しておきましょう。また、建物の基礎部分が激しく劣化している場合は、工事に耐えられずに損傷する危険性があります。
建て替えの制限は以下のような内容です。
- 法令によって建て替えができない
- 敷地面積を小さくしての建て替えは可能
築年数の古い住宅の場合、建て替えができなかったり、できたとしても敷地面積を小さくしなければならなかったりします。具体的には、建物が2m以上道路に接していなければ、建て直し自体はできません。
また、建物が2m以上道路に接していても道路の幅が4m未満であった場合は、セットバックが必要になります。セットバックとは、土地の境界線から一定の間隔を確保してから建物を建てることです。
これらは建築基準法が関係してくるので、あらかじめ業者にリフォームや建て替えは可能かどうか確認しましょう。
リフォームのメリット・デメリット
リフォームのメリット・デメリットを以下にまとめています。
メリット | デメリット |
・費用が安い
・工事期間が短い ・補助金を利用できる ・住みながらの工事が可能 |
・設計の自由度が低い
・寿命が短い ・耐震補強が困難 |
リフォームのメリットは、部分的に修繕できることです。気になる箇所だけリフォームできるのでコストを抑えられるのはもちろん、工期が短くて済みます。そのため、住みながら工事を進められます。リフォーム内容によっては補助金も利用できるので、自己負担額を抑えられるでしょう。
一方で、設計の自由度が制限されるのがデメリットです。大掛かりな間取り変更や増築などが難しいため、思い描く住宅にリフォームできないかもしれません。耐震性の強化も難しく、建物自体の寿命はそのままなので、いずれ老朽化が目立つでしょう。
建て替えのメリット・デメリット
建て替えのメリット・デメリットを以下にまとめています。
メリット | デメリット |
・自由に設計できる
・耐震性が高まる ・最新の設備で統一できる ・建て替え後の修繕費用を節約できる ・金利の低い住宅ローンを組みやすい ・税金控除や補助金を使用できる |
・費用が高額
・工事期間が長い ・工事中は住めない ・初期費用がかかる ・建て替えが制限される場合がある |
建て替えの大きなメリットは、自由に設計できることです。1から建て替えるとなれば、間取りを変えることもできるので、住まいを一新できます。設備や内装を新しくする際にデザインを統一すれば、まとまりのあるおしゃれな空間に仕上がるでしょう。
また、耐震性が高まるのも建て替えの大きなメリットです。構造の骨組みまですべて取り壊すので、耐震性能の強化が図れます。建物の寿命がのびれば、メンテナンス費用も抑えられるでしょう。
デメリットとしては、費用が高くなることです。工期も長く、仮住まい先を見つけなければなりません。身内の家にお世話になるとなればそこまで費用がかからないかもしれませんが、ホテル住まいやマンスリーマンションに住むとなれば費用がかさむでしょう。不動産取得税なども追加でかかるので、しっかり資金計画することが重要です。
リフォームと建て替えの費用の相場
戸建てをフルリフォームする際の費用相場は、1500〜2000万円になるパターンが一般的です。フルリフォームとなれば1坪あたり30〜40万円以上はかかると思っておくとよいでしょう。リフォーム内容にもよりますが、設備や内装をハイグレードにしない限り費用相場内でフルリフォームできるかもしれません。
スケルトンリフォームとなれば大掛かりな工事になるので、2000〜3000万円の費用相場になります。ここで費用を大きく左右するのは「耐震補強がどのくらい必要か」です。
建て替えにかかる費用相場は、2500〜5000万円になることが多く見られ、建物の構造によって費用は大きく変動します。例えば鉄筋コンクリート(RC)造のような頑丈な構造の場合は、解体や処分にも手間がかかるので費用は高くなるのが一般的です。建て替え時には地盤調査費や不動産取得税、印紙税などもかかるので、予算設定には注意しましょう。
リフォームか建て替えかで迷ったときはどうすればよい?
ここまで、リフォームと建て替えの違いについて解説してきましたが、実際のところどちらがよいのかわからない人もいるでしょう。迷ったときは、ぜひここで紹介する2つの方法を試してみてください。
築年数でどちらがよいかを考える
まずは、築年数が一つの目安になります。50年を超えた建物は設備や内装はもちろんのこと、配管にも手を入れなければならない状況です。リフォームは表面上の改修がメインのため、配管をすべて取り替えるのは難しくなります。
仮にフルリフォームで対応したとしても、かえって建て替えよりも高額になる可能性があります。築年数が50年を超えている場合は、一度建て替えの見積もりをとってみるとよいでしょう。
業者に相談する
自身で改修方法を決められない場合は、業者に相談するのも手段の一つです。業者に相談すると、予算やライフスタイル、現場状況など総合的に見てから判断してくれるので、最適な答えが見つかります。同時に工事の進め方や費用を抑えるコツなども紹介してくれるので、前向きに住宅改修に挑めるでしょう。
ライフスタイルに合わせてリフォームか建て替えか決めよう
リフォームと建て替えは、どちらも住宅の快適性を高める改修方法です。フルリフォームすると最新設備を導入できたり内装を一新できたりする一方で、建て替えは基礎部分から変えられます。
改修工事が大きく異なるのはもちろん、改修後の寿命も変わってくるので、ライフスタイルに合わせて適切な改修方法を決めましょう。業者に相談すると最適な方法を提案してもらえることもあるので、どちらがよいか迷ったら相談するのも手段の一つです。