国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査報告書」によると、既存の住宅を選んだ理由として「リフォームで快適に住めると思ったから」を挙げた人の数は前回の同調査よりも増えています。
家が古くなったり、生活スタイルが変化したりした場合、別の住宅に移り住むのではなく、現在暮らしている家または中古市場で販売されている家を、リフォームして自分たちが暮らしやすい家に変えていこうという考え方が注目されています。
実際にリフォームした人たちは、どのようなことがきっかけでリフォームに踏み切ったのでしょうか。この記事では、リフォームのきっかけ、リフォームに適したタイミングはあるのか、リフォーム業者を選ぶ時にはどのような点に注意すればいいのかについて解説します。
リフォームのきっかけ
リフォームに踏み切るきっかけにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、主要なものを5つご紹介します。
老朽化や故障
まず挙げられるのは老朽化や故障です。先に述べた国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査報告書」でも、リフォームの動機として「住宅がいたんだり汚れたりしていた」と述べた人は36.5%で最も多くなっています。
どんなに丁寧に手入れをしながら暮らしていても、住宅の設備や資材の老朽化や故障は避けられません。居住開始から10年程度で、老朽化や故障をきっかけとしたリフォームは増え始めます。IHコンロ、ガスコンロ、給湯器をはじめとして、使用開始から10年が耐用年数の目安とされているものは多いです。また、複合フローリングに小さな修復が必要な箇所が出てきたり、壁紙の汚れが目立ってきたりします。
コンロや給湯器などを最新のものに入れ替えることで快適に安心して暮らすことができます。また、壁紙やフローリングを新しくしたり、畳の裏返しをしたりすることで、部屋の印象が明るくなり、気持ちも前向きになるでしょう。
家のメンテナンス
続いての理由は「家のメンテナンス」です。国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査報告書」では23.7%の人がリフォームのきっかけとして「家のメンテナンス」を挙げており、2番目に多くなっています。この「家のメンテナンス」は、平成27年度の調査までは3位だったのが年々比率を増しており、「今ある家を丁寧にメンテナンスしながら暮らす」という意識の高まりが感じられます。
具体的な工事内容としては、洗面所・風呂・トイレなど水回りの設備交換や、外壁を塗り替える、断熱や結露防止の工事を行う、基礎を補強するなどが挙げられます。どれも住宅を長持ちさせるには必要な対応と言えるでしょう。
生活の質の向上
続いて挙げられるのは、「生活の質の向上」です。今の生活空間で、もっと快適に暮らしたいので、そのために必要な工事をするという人が増えています。
具体的には、寝室にクローゼットを増やす、キッチンにパントリーを設置するなどのように収納スペースを増やすパターン、在宅勤務が増えたので家で落ち着いて仕事ができるスペースを新たに作るパターン、ガスコンロからIHコンロに変更してお年寄りが調理しても危なくないようにするパターンなど、いろいろなケースがあります。
「老朽化や故障」のような、マイナスの部分を修復するためのリフォームというよりは、プラスにするためのリフォームである点が特徴的です。
老後の準備
続いては老後の準備です。具体的には、廊下やトイレ、風呂場などに手すりをつける、床材を剥がしてバリアフリーにするなどがあります。
バリアフリーにするには、「フルリフォーム」「スケルトンリフォーム」などと呼ばれる、梁や柱、壁といった家の構造部分だけを残して他の部分は全て撤去してもう一度内装を組み直すリフォームが必要になります。それだけ金額もかかりますし、場合によっては工事の期間中別のところに仮住まいを用意する必要があるかもしれません。
広い意味では寝具を布団から寝起きの楽なベッドに変えるために和室を洋室にリフォームする、ドアを引き戸に変える、空調を全館空調に切り替えるなども老後の準備に入るでしょう。
時間的にも、金銭的にも、体力的にも大掛かりになるので、元気に動けるうちに老後のことを考えてリフォームする人が多いです。
ライフスタイルの変化
続いてのきっかけライフスタイルの変化です。子どもが生まれた、二世帯同居をすることになった、逆にお子さんが独立して家族の人数が減った、在宅勤務がメインとなる職場に転職をしたなど、ライフスタイルの変化はさまざまです。
そのライフスタイルの変化に合わせてリフォームする人も多いです。子どもが2人になったので間仕切りを作っていなかった2つの部屋を仕切って2つの個室にする、在宅勤務が主となったのでリモート会議にも支障が出ないよう防音室を作り仕事部屋にする、年老いた両親と同居することになったので廊下やトイレに手すりをつけるなどといったリフォーム例が考えられます。
こちらも、マイナス面を埋めるというよりは、より暮らしやすいように環境を整えるリフォームだと言えるでしょう。
季節の観点から考えるリフォームするタイミング
リフォームをするのに、適したタイミングというのはあるのでしょうか?春夏秋冬それぞれのメリットデメリットを見ていきましょう。
春は暑すぎず寒すぎず、晴れの日も多いのでおすすめです。エアコンなしでも十分過ごせるため、電気工事を伴うリフォームをしていても暑さや寒さに耐えられないということはありません。補助金も、年度単位で予算が決まっていることが多いので、春であれば補助金が受け取れる可能性が高いです。一方、人気の季節なのでリフォームの依頼が殺到し、すぐに工事ができない恐れがあります。
梅雨から夏は暑くて湿度も高いため、あまりおすすめしません。雨が降ると外壁の塗り替えや屋根のメンテナンスなど外での作業は延期せざるをえなくなり、工期が伸びる恐れがあります。しかし、夏は日照時間は長いため、晴れていて、近所の方からの了解が取れれば長時間作業をすることが可能です。
秋も暑すぎず寒すぎず、晴れの日が多いので比較的おすすめです。ただし台風がくる恐れがあるので、台風の進路によっては2,3 日間作業が丸々止まってしまうということもありえます。
冬は寒いため、地域によっては塗料が固まりにくくなる温度まで気温が下がってしまいます。また、日照時間も短いため早めに作業を終えざるをえないというデメリットもあります。
以上のことから、おすすめの季節は春、多少その他の条件が悪くてもいいから安くして欲しいということであればそのほかの季節を検討することをおすすめします。
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依頼するリフォーム業者を選ぶ時のポイント
依頼するリフォーム業者を選ぶ際は「実績や経験はあるか」「アフターサービスはどのようになっているか」「価格は適正か」を意識しましょう。
まず、「実績や経験があるのか」です。ホームページ等で「リフォーム」とうたっていても、実際には新築メインだったり、あまり施工例がなかったりする業者もいます。また、同じリフォームでも、水回りが得意な業者もいればリビングが得意な業者もいます。設備の入れ替えがメインのところ、リノベーションのようにデザイン提案からしてくれるところといったように提案力もさまざまです。
会社のホームページから施工例や会社の設立年を確認し、自分の希望にあったリフォームがお願いできそうか確認しましょう。
続いて「アフターサービスはどのようになっているか」です。リフォームは、工事が終わったら終わりではありません。その後、5年、10年と使っていく中で、小さな不具合が出てくることもあるでしょう。そういった時にアフターサービスを受けられるのか、どのような形で受けられるのかは、工事をお願いする前に確認しておきましょう。
いくら工事費が安くても、アフターサービスがいい加減な会社では不安が残ります。そういった面も含めて検討しましょう。
最後に、「価格は適正か」です。リフォームは何度もやるものでもなくどの範囲でリフォームをするかにもよって価格も変わるので、適正価格がわかりづらいです。そのために、3〜5社から相見積もりを取って、比較検討しましょう。比較することで、適正な価格がどれくらいなのか見えてきます。極端に高い業者は不正に価格を釣り上げている恐れがありますし、極端に安い業者は手抜き工事をしている恐れがあります。
以上3つのポイントを抑え、総合的に信頼できそうな業者に依頼しましょう。リフォームは職人さんの技術も大事なので、金額だけでなく、総合的に判断することをおすすめします。
リフォームで快適な生活を手に入れよう
ここまで、リフォームのきっかけ、リフォームのタイミング、リフォーム業者の選び方などについて見てきました。
リフォームというと、古くなったものを新しくするというイメージを持ちがちですが、「家のメンテナンス」「生活の質の向上」「ライフスタイルの変化」など前向きな理由でリフォームする人も多いことがわかりました。
また、リフォームに向いている季節は春、「業者は実績や経験はあるか」「アフターサービスはどのようになっているか」「価格は適正か」などを業者選びの基準にするといいこともわかりました。
前向きな理由でリフォームをする人が多いことを考えると、リフォームは気になった時が検討しどきだと言えそうです。リフォームで、更に快適な家を目指しましょう。